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第11期 コーディネーターの活動報告

乗上 恵里香 Erika Norikami
第11期 ローレンス/カンザス大学 ローレンス校 東アジア研究センター
カンザス州
大学時代、米国コロラド州に留学。大学卒業後は英語教育 会社に研修コーディネーターとして就職。その後、子供英語 インストラクター養成講座に通い、JOIプログラム応募を決意。

日本の種を植え続けた2年間

カンザスを出発する前日、荷物の整理を終え、スーツケースに全ての物を詰め込んでいました。その中の大半は、いただいたお礼の手紙や色紙、プレゼントなど、本当に沢山の物が詰まっていました。それを見たとき、2年間のここでの生活に終止符を打つのだなと実感しました。これらの皆さんからいただいたものは、私の一生の宝物であり、これからの人生の支えになっていくでしょう。

カンザスでの生活を振り返ってみると、本当にあっという間に過ぎて行きました。思い起こせば、車の運転もままならなかった最初の数カ月。帰国一ヵ月前には3時間かけて、隣町の大学まで運転をして、アウトリーチ活動を行いました。当初はそんな事ができるとは思っておらず、自分の活動ぶりに驚きを隠せません。

私の2年目の活動は1年目の活動継続とともに、新しい事にも挑戦していきました。

1つ目は1年目と継続して、学校・コミュニティー団体の訪問を行いました。「生徒達がとても楽しんで、日本文化を学んでいた。もう一度クラスに来て欲しい」。そう言われ、何度も同じ学校に行くことがありました。とても嬉しく、自分のやる気に繋がりました。

また、2年目は同じ訪問先だけでなく、新しい学校、コミュニティー団体の訪問にも力を入れました。時には何時間もかけて、牛や馬しかいないような道を走り、田舎の学校へ行くこともありました。

新規の訪問先と言えば、老人ホームでの活動が印象に残っています。出席者の方から日米の戦争時代の話や体験を聞き、胸を痛めるとともに、自分自身にとっても大変勉強になりました。

2つ目は平塚・ローレンス市の姉妹都市支援活動の継続です。1年目の夏には通訳として、平塚市から訪問した約20名の中・高生と共に、カンザスの観光地を回りました。現地の学生だけでなく、こうして日本の学生と交流を持てたことも、貴重な体験でした。

平塚・ローレンス市の青少年交流活動は毎年行われています。しかし、ローレンス市からの人数確保は毎年困難であり、どうにかできないかと相談を受けていました。それを知り、2年目は姉妹都市宣伝活動を行うため、地元の中学校、高校を何度も訪問し、青少年交流活動の説明、日本文化の紹介を行いました。そのおかげで、今年は25名以上の応募があり、その中から20名を選抜することができました。地道な活動により、多くの学生が日本に興味を持ち、応募してくれた事は本当に嬉しかったです。

青少年交流団が決定されると、次に待っているのは月一度のオリエンテーションです。それにあたり、ホームステイ・ハンドブックの作成を頼まれました。内容は基礎的な日常会話、価値観の理解、基本的なマナーの習得を目指したものです。この作成したハンドブックは今後も使用される予定で、時間をかけて作成した甲斐がありました。

2年という短い間でしたが、姉妹都市活動の一員として携わり、協力できたことに誇りを持っています。これからも、平塚・ローレンス市の活動が継続され、さらに活発になっていくことを願っています。

3つ目は大きなイベントの開催及び、参加です。特に印象に残っているのは、カンザス大学で行った日本祭とボーイスカウト団体によって開催されたスカウティング500です。

スーパーバイザーの協力により、私が所属するセンターと美術館が協力して、日本祭を行いました。午前中には教師向けワークショップを開催し、日本の教育制度や伝統文化について紹介をしました。午後には茶道、和菓子について教授の方からの講義、美術館での茶道道具展示を行いました。準備には時間がかかり大変でしたが、約200人の一般客が訪れてくれました。2年目には日本祭という大きなイベントを開催でき、協力して下さった方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

そして、一番参加者数が多かったイベントはスカウティング500です。1,200のボーイスカウト団体が参加し、1,000人以上の子どもたちが私たちのブースに立ち寄ってくれました。書道体験、お箸の使い方、鉢巻き作りなど、様々な日本文化体験コーナーを用意しました。私自身も多くの子ども達と触れ合うことができ、とても楽しい時間を過ごしました。

この2年間、突っ走るようにアウトリーチ活動を続けてきましたが、最終的には17,000人の人々に日本の種を植えることができました。

これも私の周りの方々のおかげで、それをなくしては、多くのアウトリーチ活動は成立しませんでした。終始サポートして下さった私のスーパーバイザー、東アジア研究センター職員の皆様、日米協会の皆様、2年間という長い間、娘のように受け入れてくれたホストファミリーには、心より感謝の気持ちを申し上げます。

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蓮井 頼子 Yoriko Hasui
第11期 シャンペーン/イリノイ大学 東アジア・ 太平洋研究センター
イリノイ州
大学時代に中国に留学。卒業後はシンガポールに渡り就職。数年のシンガポール生活を通して異文化間交流・理解の大切さ、そして日本の文化の素晴らしさに気付き、もっと世界中の人に日本を知ってもらいたいと思い、JOIプログラムに応募。

仲間と築いた日本文化の輪

2年前、不安だらけでイリノイ州シャンペーンに降り立ったことを今でも覚えています。一体どんな生活が待っているのか、JOIコーディネーターとしてきちんと大学やコミュニティーのために貢献できるのかと不安と期待が入り混じった複雑な気持ちでした。しかしそんな不安もしばらくすると消え、アメリカでの新しい生活を楽しんでいる自分がいました。最初は右側通行に慣れず度々逆走してしまうこともあった車の運転も、慣れた頃にはコーン畑を横目に見ながら爽快に道路を走り抜ける感覚が好きになり、いつの間にかドライブすることが趣味になっていました。

「たくさんの人と日本文化の素晴らしさを共有したい、日本を好きになってもらいたい」と思い応募したJOIプログラムでしたが、2年間を振り返ってみて十分多くの人に日本文化を知ってもらえたと思う反面、もう少し頑張ればもっとアウトリーチができたのではないかという思いも残っています。1年目は学校訪問があまりできなかったこともあり、2年目は精力的に学校訪問を行うことにしました。まずは、私がJOIコーディネーターとしてイリノイ大学に在籍しているということを宣伝する事から始まりましたが、この宣伝活動が予想をはるかに超えて難航しました。

当初私は、活動拠点周辺ではあまり知られていない日本文化だからこそ学校の先生方が興味を持ってプレゼンテーションの依頼をして下さるという安易な考えでいました。しかし、いくつもの学校に連絡を取っても一向に返事が来ないという状態がしばらく続きました。誰も日本文化に関心がないのではとさえ思い始めどうしていいのかわからないまま、でも根気よく連絡をし続けていると、ある日、プレゼンテーションの依頼が来始めました。このようにして、少しずつゆっくりとしたペースで学校訪問を続けていくうちに、口コミでも情報が広まって多くの学校から依頼が来るようになりました。

訪問先の先生からは、イリノイ州南部の学校は国際交流が非常に少ないので、絶対に行ったほうがいいというアドバイスをいただき、南部にある学校にも足を伸ばしました。時には片道2時間以上もかかる学校へ行くこともあり、早朝4時起きで家を出発しなければいけないような体力的にかなりきつい日もありましたが、生徒たちのうれしそうな顔と活き活きとした目を見ると本当に来てよかったと思うことができました。

プレゼンテーションの内容は、書道、折り紙、日本の学校生活や食生活、ビジネスマナーなど様々でした。毎回プレゼンテーションを終えた後、「いつか絶対に日本に行きたい」と生徒たちが言ってくれたことや「生徒たちが世界に目を向ける重要な機会になりました。来てくれて本当にありがとう」という先生からの言葉も活動の大きな支えとなりました。学校訪問は小さく地道な活動ですが、日本ファンを確実に増やすことができ、それを直接感じることができる素晴らしいものでした。

2年間の活動の中で一番大きく、大変だったのが2013年9月に行った英語落語イベントです。大変だった分、思い入れがあり一番心に残っているイベントでもあります。北米ツアーでお越しになる落語家桂三輝さんの公演会場として、在シカゴ総領事館よりお話をいただきました。私の所属先であった東アジア・太平洋研究センターのセンター長が会場を確保して下さり、私はイベントの宣伝に全力を注ぎました。落語という特異な伝統芸能をどのように紹介するべきか、どうしたらより多くの人が見に来てくれるのか悩む日々でした。

そこで、ラジオ、新聞、関係部署のホームページ、学校訪問、知り合いによる口コミなど、思いつくすべての手段で宣伝をしました。学校訪問では、わずかな時間でいいのでと先生にお願いし、落語のプレゼンテーションをさせていただきました。コミュニティーの日本人の方々も、私の代わりに多くの人に口コミでイベントを宣伝してくださいました。そんな努力が実ったのか、当日、200席ほどある会場はありがたいことに満員となり、会場は終始爆笑の渦に包まれていました。改めて観客みなさんの笑顔を見た時、嬉しさのあまり涙がこぼれました。

この2年間、私がJOIコーディネーターとして務め上げることができたのは、私を支えてくださった方々のおかげです。オフィスのみなさん、コミュニティーのみなさん、JOI11期のメンバー、そして日々心地よい生活を提供して下さったホストファミリーには、言い表しようのない特別な思いがあります。苦しい時、私を応援してくれたみなさんのことを私は仲間だと思っています。2年間で広げた日本文化の輪は、仲間と一緒に築き上げたものであり、今後もこの輪が広がり続けることを願います。

最後に、このような素晴らしい機会を与えて下さった国際交流基金日米センター、ローラシアン協会、イリノイ大学のみなさまに心から感謝申し上げます。

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湯田 晴子 Haruko Yuda
第11期 シャーロッツビル/バージニア大学 アジアインスティチュート
バージニア州
高校時代のオーストラリア留学、大学時代のタンザニア留学 等を通して国や異文化を超えた交流に興味を持つ。日本の大学院の教育学研究科にて修士課程を修了後、これまでの経験を活かしたいと思い、JOIプログラムに応募。

バージニアで拡大ネット和ーク

私のJOI2年目の夏は、コミュニティカレッジ間をつなぐシンポジウムでのプレゼンテーションから幕を開けました。夏休み中にバージニア大学において催された1週間のシンポジウムには、州内の5つのコミュニティカレッジから参加者が集まり、アジアやロシア、アラブ諸国などの文化に関する講義が行われました。私の2年目の活動は、そこで出来た繋がりを基に広がっていくことになりました。

9月にはシンポジウムに参加していた先生方からのリクエストをいただき、バージニアの南西部を訪問しました。カレッジがあるリッチランドへは、シャーロッツビルから車で4.5時間ほどの道のりでした。3泊4日のビジネストリップを計画し、シンポジウムで出会った先生方の企画の下、幼小中高、大学と様々なレベルの学校を訪問しました。4日間で行ったプレゼンテーションの参加者は550人にも上りました。どこに行っても私の話を熱心に聴く学生や先生方をみて、こうして日本人として遠く離れた地に出向くことの意義を改めて感じました。ここで私のプレゼンテーションを聞いた小学生の保護者から12月頃に連絡をいただき、「娘のクリスマスプレゼントにあなたが紹介していたランドセルを買いたいんだけど、どこで買えるのか教えてくれませんか」と聞かれたこともありました。

翌月の10月にはシャーロッツビルから比較的近くにあるブルーリッジコミュニティカレッジ(以下BRCC)を訪問することができました。こちらにも3日間滞在し、茶道や日本伝統芸能、ポップカルチャー、福島の原発問題などといったトピックをお話しました。BRCCには日本語のプログラムはありませんでしたが、オンラインで日本語のクラスを取っている学生や、独学で日本語を勉強している学生が何人もいたことに驚きました。

JOI最終年である2年目の目標には、私がいなくなった後にも“使えるモノ”を残す、といったものがありました。日本に関する情報や教材が比較的手に入りやすいシャーロッツビルと、日本に関する興味関心が強い人々が多い地域とをつなぐことがしたい、という私の1年前からの思いは、2年目を迎えて一層強くなっていました。この思いを実行するつもりで、シャーロッツビルにあるピーデモント・バージニア・コミュニティカレッジ(以下PVCC)の先生方の力を借り、日本関連でコミュニティカレッジ間をつなげることを目的としたイベントを企画しました。

PVCには日本語プログラムがあることに加え、百人一首や書道、茶道などの日本文化に詳しい学生がたくさんいます。また、熱心な日本語の先生の下、日本文化に関するイベントも活発に行われています。対してBRCCでは、日本語のクラスはなく、日本に関する文化的なイベントを行うためのリソースも手に入りにくい状態でした。しかしBRCCには、日本文化に大変興味のある先生方や学生が山ほどいます。わずか1時間半ほどしか離れていないこの2つのカレッジを1度つなぐことができたら、私が日本に帰った後も何かできるのではないか。そう思い、この二つのコミュニティカレッジの先生と協力し、両カレッジの職員や学生を対象とした茶道ワークショップを開催することにしました。

ワークショップでは、11年間にも渡って茶道を勉強しているというPVCCの学生を招いて、デモンストレーションや茶道の歴史、哲学についての講義を行ってもらいました。ワークショップ後半には参加者同士がペアをつくり、パートナーにお茶を立てて出す、といった茶道体験も行いました。参加者の方々にはとても満足していただいたようで、とりわけBRCC側の方々からは、「これをきっかけにシャーロッツビルで行われているイベントの存在を知ることが出来た」「日本文化をもっと深く知ることの出来る素晴らしい出会いがあった」など、うれしい言葉をいただきました。そして何より、ワークショップで出来たつながりを通して、PVCCとBRCCが共同で日本文学読書クラブを設立する、というアイディアも生まれました。2つのカレッジの先生方や学生達がこのようにして繋がるきっかけを作れたことを、大変嬉しく思いました。

コミュニティカレッジ関係以外にも、1年目に引き続き学校訪問やコミュニティ訪問を行いました。夏休みには、シャーロッツビルで初めての試みである中学生対象の日本語サマーキャンプを企画し、高校の日本語の先生と一緒に試行錯誤で実施しました。課題も多く残りましたが、費用や場所の確保、宣伝の方法など、キャンプを実施するために必要なものを明確にすることができました。今年の経験を生かして来年も続くのではないかと思っています。

この2年間を通して、素晴らしい出会いと様々なスキルを手に入れることができました。この機会を私に与えてくださった全ての皆様に感謝いたします。

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