日本語教師を目指していて運良く出会えたJOIプログラム
旅行会社で働きながら、日本語教師になるために日本語学校に通っていました。そこで、講師をされていたJOIのOGと出会い、JOIのことを知りました。私は交換留学生としてオランダに行った経験があります。その留学をきっかけに18歳のとき、茶道と華道を習い始めました。その頃から、いつか海外で日本文化を教えたいと思っており、JOIを知ったときは渡りに船だと思いました。応募時は独身だったので、あまり悩まずに応募しました。
2年間かけて日本文化を幅広く伝えること
JOIプログラムの派遣期間が2年というのは、ちょうどいいと思います。配属された場所に慣れるまで半年かかり、活動し始めると現地の人から「2年目も来てほしい」というリクエストが出てきます。私は、JOIの活動の目的は日本文化を “幅広く”伝えることだと考えています。2年という期間は、自分がフィジカルに行ける範囲で、ちょうどいい期間だと思います。
大切なのは、日本文化のエッセンスを伝えること
アウトリーチでは茶道と華道のアクティビティを行うことが多かったのですが、深く伝えようとするとさまざまな道具が必要になり、時間もかかります。お茶の作法はお茶室に入ることから始まり、約200ステップもあります。それを現地で再現することはできません。そこで、私は日本文化のエッセンスを部分的に短時間で見せる方法を取りました。例えば茶道の授業では、生徒たちに家からシリアル用の器を持ってきてもらい、お茶碗に見立てました。お茶が入っていなくても、正座をしてお茶碗を回して飲むという作法を教え、少しでも日本の文化を味わってもらうようにしました。

共通点から日本に興味を持ってもらう
文化を伝える際に心がけていたことがあります。それは、お互いの違いだけでなく、共通点があることも伝えるということです。自分たちと全く違うことを伝えるよりも共通点から話を発展させるほうが聞いてもらえることに気づいてからは、彼らにとって分かりやすい比較対象を用いて日本のことを紹介しました。例えば、同じアジアでも日本と中国では、漢字を使っている点は同じだけれども、読み方が違います。同様にスペイン語と英語は違うけれども、アルファベットを使っている点は同じで、読み方が違います。日本語と中国語の関係と、英語とスペイン語の関係には、共通点がありますね、というように異なる点と共通点を伝えました。共通点は、異文化を伝える時のキーだと思います。

共通点から日本JOIの活動がキャリアを切り開いてくれた。今は「ひとりJOI」
JOIの活動を行う中で、日米の教育の方法や考え方が全く違うことを実感しました。日本では決まりごとが多い印象ですが、アメリカでは、もっとopen-ended(制約がない)で、決められた答え方をする必要はありません。私は日本文化を教えるにあたって、アメリカ流の教育学を学びたいと思いました。
JOIの派遣先であったウェスタン・カロライナ大学は、前身が教育大学で、教育学や教員養成に力を入れています。私はJOI終了に合わせて、同大学の大学院に進学し、美術の教員免許を取りました。進学にあたってはJOIの活動が評価されて、在学中に同様の活動を続けることにより奨学金を受けることができました。在学中の2年間も事務所をそのまま使わせてもらい、時間があれば近くの学校にアウトリーチして活動を続けました。このキャリアは、JOIプログラムに参加しなければ得られないことだったと思います。

今は現地に住む日本人と結婚し、グリーンカード(米国永住権)を取得して、ノースカロライナ州で日本文化を伝える仕事をしています。住まいとは別の場所に小さなスペースを借りて、文化センターを設置し、そこでお茶やお花を教えています。いわば「ひとりJOI」、「own JOI」ですね。
JOIネットワークをフル活用。私にとってJOIはJOY
現在もJOIで得た人的ネットワークにはとても助けられています。文化センター開設時には、在アトランタ日本国総領事や地元の市長がいらして下さいました。また、市長が出席するならば、と商工会長や日米協会の幹部らも駆けつけてくれました。このような方々を呼ぶことができたのは、JOIのネットワークのおかげです。私にとってJOIはJOY、喜びです。私の人生は今が最高です。
大切なのは、英語力より積極的な姿勢てJOIはJOY
英語はJOIの同期の中で一番できませんでしたが、アメリカ人には積極的に接していけば大丈夫です。自分から行くことが必要です。日本では、人にアドバイスする時、相手が嫌がっていないかと気を遣いながら、遠慮気味アドバイスすると思います。しかし、アメリカでは、先生のような立場の人がアドバイスをするのは当然であり、それにどう対応するかは、相手の自由だと考えられています。言われたことを、真に受けず、スルーしてもいいんです。だから、言う方も、その前提で、自分の言いたいことを言います。JOIの活動では、相手にしてくれない人に出会うこともありますが、アメリカのそのような、日本とはまた違う方法でお互いの意見を尊重する文化が分かってくると、落胆しなくなりました。これはアメリカ人から学んだことの一つです。
40代ならではの人生経験が強みになる
40代・50代の方には、こう伝えたいです。「あなたが思っているより、あなたはすごいです!」だからぜひJOIに行ってほしい。私は40歳の時にJOIに参加しました。同期には、50代・60代の方もいました。みんなとても楽しかったと言っています。JOIに参加することでキャリアが途切れてしまう面もありますが、この世代は年齢を経て、いろいろな経験をしています。その人生経験が役に立ちます。派遣中の生活は、オリエンテーションや派遣中の研修があるので心配ありません。また、ローラシアン協会やスーパーバイザーのサポート体制があるため、とても心強いです。だから、若い人だけでなく、40代・50代の人にもぜひJOIに参加してほしいと思います。JOIの後ろ盾で、その年齢ならではのキャリアが花開きます。自分が思っているよりも、みなさんは世界で通じる力を持っています。興味があればぜひJOIにチャレンジしてみてください。
